~ハイブリッド・リフォーム~
過去と未来をつなぐ空間づくり
3世代で暮らすために
ある日、「鉄骨のリフォーム工事はできますか?」というお問い合せをいただいた。我々の「もちろんです!」との回答から、この計画はスタートする。久保田建設は、数多くの構法において実績を有する。その強みを活かしたものが、このプロジェクトである。既存建物は鉄骨3階建。平成年度に計画・完成したものであり、現行基準に足る強度を有する。構造補強にかかる費用負担は抑えられる点が心強い。クライアントの希望は3世代同居。既存スペースでは足りなさを感じるという。幸いなことに、敷地には余裕がある。ここで、われわれは2つの提案をおこなった。ひとつは「建物解体の後、木造2階建の新築」、もうひとつは「既存鉄骨建物の横に木造建物を増築」という案・・・コスト比較とともにプラン提示を行った。
家族のため、未来のため
2つの提案には大きなコスト差がなかった。ここで選択されたのは後者である。親・子・孫で暮らしてきた歴史を示すのが既存の建物である。この記憶を残したい・・・その気持ちが決定要因になったようである。では、増築部分の構造をどのように考えるか・・・一般的には鉄骨に対する増築は鉄骨であろう。今回は、そこをシフトさせた。最近の建築基準法改正により、増築に関する考え方が柔軟になったのである。2つの建物が構造的に別の動きができるのであれば異なる構造の建物を並べることができるというものである。それをふまえて、今回は増築部分を木造で計画することとなった。ハイブリッド・リフォームである。
階段はひとつ。エクステンションを有効に
鉄骨3階建の既存建物に対し、増築部は木造2階+ロフトである。階段は既存建物のものを使い、増築部は「スペース確保」を優先した。リビングスペースを核とすることで廊下・階段などの共用スペースを省略し、エクステンション(増築)部分の室としての効率をアップさせたのである。既存部と増築部が並ぶ場所にはエキスパンションジョイントが設けられ、耐震への配慮がなされている。各空間の連携を大切にし、ささやかな「うつろい」を呈するゲートのような場所にもなっている。
2ヴォリューム、1テイストのデザイン
鉄骨と木造・・・どちらも直方体のシェイプとして並ぶ。既存部は1階に両親の生活スペース、2階に夫婦と子供のDKスペース、3階に寝室を配した。一方、増築部1階はビルトインガレージ、2階は前面にアルミルーバーで包まれたランドリースペースとリビングスペース、そして収納ロフトを有する。内部空間の多様性を包み込むように、外壁はシルバーメタリックのガルバリウム鋼板で、ひとつにまとめられた。